本学の学費に関する考え方について

本学の学費に関する考え方について

2020年09月15日

本学の学費に関する考え方について

北星学園大学・北星学園大学短期大学部
学長 大坊 郁夫

学生、保証人の皆さんへ

 なかなか収束をみない新型コロナウイルス感染症により、学習面や生活面において多大な影響を受けられておられることに、謹んでお見舞い申しあげます。
 さて、年明けからの新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、4月に政府の緊急事態宣言が出され、 これに伴う自粛要請によって本学でも、様々な行事の中止、学年暦の変更、教職員の出勤抑制を余儀なくされました。この難局の中で、教職員は精一杯の知恵を絞り、学生の皆さんの学びを止めないよう、できることにしっかりと取り組んできました。

前期の授業やキャンパスの運用
 本学では、学生の皆さんや教職員の生命、健康、安全を第一に考え、止む無くすべての授業を”遠隔(オンライン)”で実施することを決断し、5月11日(月)からインターネットを利用した遠隔授業を始めました。その後、国及び北海道の方針や感染状況を鑑み、慎重に検討した結果、感染拡大防止措置を徹底しつつ、7月20日(月)から、対面でなければ成り立たない実習・実験科目や、設備面で対面でなければ教育効果が見込めない科目等、一部の授業を対面で実施しました。
 5月から遠隔による授業を実施するに際し、遠隔授業での情報実習室の利用や、図書郵送貸出の対応を行ってきました。しかし、各種相談等を除いては、7月の一部対面授業開始まで、キャンパスへの立ち入りは極力控えていただき、図書館の開館時間の短縮や体育館等の施設も利用ができない状態が続いたことなどからか、授業料等への質問が寄せられていますので、大学の授業料等の性質と、本学の授業料等に関する考え方をご説明したいと思います。

大学の授業料等の性格と考え方
 本学では、授業料、教育充実費等を、学生の在学の対価として徴収しております。これらは、年度ごとに納めていただいていますが、その年度のサービスへの対価ではなく、入学から卒業までの4年間(短期大学部の場合は2年間、大学院の場合は2年間もしくは3年間)で、学位を授与するための教育に必要な費用の総額として設定されています。費用総額を各年に分割して納めていただいていますので、今回のような「緊急事態」によって、授業の方法や開始時期が変更になったとしても、減額できる性格のものではないのです。
 また、教育充実費も授業料と同様で、その年度のサービスへの対価や施設利用料等の意味合いのものではなく、大学の永続的運営に必要な施設の建設や維持管理、物品購入の支出等に充てられています。例えば、本学では2015年度に新校舎を建築しましたが、その年度に在籍している学生の教育充実費額を増額しておりません。つまり、単年度に納めていただく教育充実費に見合った施設設備等の整備だけを行っているのではなく、中長期の計画(建物の老朽化への対応、パソコンの入替え等)に基づいて施設整備等を行っています。
 緊急事態宣言に伴い、国及び北海道の方針や感染状況を鑑み、慎重に対応せざるを得ない状況の中、一定期間施設を利用できない状況でありましたが、大学の運営自体は停止しているわけではなく、施設の維持管理は通常通り行っており、遠隔授業の設備充実や対面授業を再開するための感染防止対策、消毒清掃の経費など、例年にない対応を行っています(末尾、注記参照)。したがって、教育充実費も減額することはできないのです。
 これまでご説明してきた授業料等の基本的な考え方に基づくと、特別な状況下で減額できる性格のものではないと同時に、特別な状況に陥り新たな取組みが必要な場合でも、入学時にお約束いただきました授業料等以上の費用を、学生及び保証人の皆様にご負担いただく性格のものでもありません。

授業展開の工夫
 それぞれの授業は、シラバスで示されている学修内容や学修レベルを達成できれば、単位が授与されています。国の認可を受けて教育を提供し、学位を授与する大学としては、どのようなことがあっても、すなわち「遠隔」であったとしても、授業の質を下げることは許されません。
 そこで前述の通り「遠隔授業サポートチーム」を教員・職員の垣根を越えて組織し、学生及び教員のサポートに教職員一丸となって取組むとともに、非常勤講師も含め教員向けに、新たなシステムの利用方法や、質を落とさないための遠隔授業のあり方など、何度も講習会を開催し、各教員は創意工夫して授業展開に努めてまいりました。
 前期の授業は、Zoom等のインタラクティブな形式、Moodleでのオンデマンド授業により、時間数は通常開講期と同じ授業時間数・回数で実施することができ、その中で何とか、遠隔授業であっても「教育の質」を保つよう努めてまいりました。ただ「教育の効果」については、今後、対面授業との比較検証を詳しく行う必要があると考えています。
 手探りで始まった遠隔授業ですが、8月下旬に実施した学生の皆さんへのアンケートでは、「遠隔授業の方が理解しやすい場合もある」などの声が寄せられるなど、この授業形態ならではの新しい気づきもありました。一方で「課題が多すぎる」などの意見も寄せられました。また、残念ながら一部の授業では質が低下したのではないかとの指摘もありました。

後期対面授業の拡大と課外活動の再開
 9月14日(月)からの後期授業については、すでにお知らせしました通り、感染予防対策を十分に取りつつ、対面授業を拡大する決定を行い、演習や基幹となる必修科目等を中心に約3割の授業を対面方式で実施します。講義科目や履修人数の多い科目は、引き続き遠隔で行っていきます。なお、今後、冬に向けて感染リスクが高まることも十分予想されます。その場合は迅速に遠隔授業に移行できる準備は完了しています。
 また、クラブ・サークル等の課外活動は、再開にあたってのガイドラインを学生部にて作成し、それぞれの学生団体の責任者と感染予防の遵守事項を確認し、8月31日から活動を再開しております。

終わりに
 学生の皆さんへのアンケートで、学費減免の要望がみられたことは、真摯に受け止めています。学長としてこれまで以上に教育の質向上に全力で取組んでいきますので、学費等の考え方について、ご理解ください。
 最後になりますが、新型コロナウイルス感染症が世界的規模で猛威を振るい続けており、国内においても一日の新規感染者数の増減が続いています。これだけ感染予防を徹底し注意している中でも、本学の関係者の感染リスクはゼロであるとは言い切れません。本学として「言われなき非難・中傷」「いじめ等への進展」「理不尽な差別」等は、今後散見が予測される教育現場での発症に備えて、毅然として対応しなければならない事項です。学生、保証人の皆さんにおかれましても、感染症対策に取組んでいただき、くれぐれも健康に留意してください。
 一日も早く状況が改善し、以前のようにキャンパス内でお会いできるようになることを願ってやみません。
 皆さんのご理解とご協力をよろしくお願い申し上げます。

注記:教育機関として実施した当面なし得るかぎりの学生支援、感染症拡大の防止策
1) 遠隔授業を受講する環境を整備していただくために、大学の拠出金と大学同窓会、大学後援会及び教職員の寄付等を原資とする2億円規模の「通信環境整備等支援金」を準備し、学生一人当たり一律5万円を給付しました。
2) 遠隔授業を行うために必要なシステムのライセンスを購入したうえで、必要なアカウントを専任教員はもとより全非常勤講師分を取得し、さらに、サーバーも増強しました。
3) 「遠隔授業サポートチーム」を組織し、学生と教員の両方の“遠隔授業”をサポートしています。
4) 延納願の提出により、授業料等の納入期限を延長することができます。
5) 国の「高等教育の修学支援制度」の対象機関として認定されているため、新型コロナウイルス感染症に係る影響を受けて家計が急変した方への支援にも対応できています。
6) 手洗い場の増設、消毒清掃の徹底、校舎の出退管理、校舎入口へのサーモグラフィカメラの設置等、感染症拡大防止策を徹底して行っています。
7) 学生支援として、就職活動をサポートするために、企業のオンライン面接に対応した専用面接室の貸出と就職相談を実施しています。また学生のメンタルヘルスに配慮して心理的な側面から学生を支えるため、通信料を大学で負担し学生相談に対応しています。